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国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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社会起業家‐地域通貨でつなげるコミュニティ‐

【概要】
日時:2007年7月28日(土)
場所:東京YWCA 217教室
講師:嵯峨生馬氏【アースデイマネーアソシエーション代表理事】

【コンセプト】
ビジネスを通じて社会に貢献する社会起業家。近年さまざまな業種、分野で活躍しています。地域通貨を通じてNPO、個人、お店や企業などをつなげる活動を続けている講師の思いと体験を通して、新しいビジネスや働き方の創造について共に考えます。

【講義内容】
<導入>
講義の最初に、嵯峨さんが企画されているアースデイマーケットの写真を見ました。地域日本全国から有機野菜や環境にいい商品を持って集まったお店が並んでいる様子や、通貨「r(アール)」で実際に買い物をしてみた様子から、地域通貨についてのイメージを膨らませました。

次に、4~5人のグループに分かれて「最近気になっている社会の問題」を出し合いました。「医師不足」、「地球温暖化」、「いじめ」、「有機野菜が高い」、「独居老人のコミュニケーション不足」、「自給率の低下」など、受講生が感じている様々な問題が出されました。

<講義>
講義の前半では、渋谷で運営している地域通貨であるアースデイマネーについてお話してくださいました。航空会社のマイレージポイントプログラムを例にした、地域通貨の定義とアースデイマネーが目指している「いいことをした人が得をする仕組み」についてのお話は、とても分かりやすいものでした。

後半は、「アップサイジング」をキーワードに世の中のいろいろな活動をつなげていくことの可能性と、現在嵯峨さんが取り組まれているサービスグラントなどの活動の事例を紹介していただきました。個人や団体をお互いに価値の高いところでつなげていくこと、持続させるためには循環させるための循環ではなく本当の意味での循環をつくることが必要、というメッセージが印象的でした。

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【受講生の感想】
・地域通貨は、地域の活性化だけじゃなく、社会貢献の促進ともつながっているということは知らなかったので勉強になりました。

・アップサイジングという新しい概念が勉強になりました。他、"企業の知恵"を"社会事業"にということもいい気づきになりました。

【運営委員より】
様々な分野で活動している人や団体を価値の高いところでつなげていくことで、そこからさらに新しい可能性が広がっていくんだ、という希望を持つことができた講義でした。

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貧困‐格差に隠された問題‐

【概要】
日時:2007年7月14日(土)
場所:東京YWCA 217教室
講師:湯浅 誠氏【NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長/便利屋あうん代表】

【コンセプト】
豊かな国と言われている日本。「格差」「底上げ」といったことが盛んに議論される中、そこに隠されている貧困の実態は?日本の中にもある貧困問題を通じて、なぜ貧困が生まれるのか、私たちに何ができるかを考えます。

【講義内容】
≪導入≫
自分達の最低生活費を計算してみよう。最低生活費計算シート(簡易版)を基に、最低生活費を計算。一人で生活する場合、家族や子どもがいる場合には、どれくらいが必要なのかを考える。ここでは、計算を簡単にするため、基本的な基準分類と「児童養育加算」「教育扶助」「住宅扶助」だけで計算書式を使いました。

≪講義≫
「現代日本の貧困 迫り来る〈貧困〉に、私たちはどう向き合えばいいのか」ということについて、様々な事例をもってお話しいただきました。

まずは、用語の問題として:
「ホームレス」と「野宿者」、「ネットカフェ難民」という言葉が使われているが、その言葉の意味する内容について。今の日本では、公園・河川敷や路上で生活する人だけをさして「ホームレス」と呼ぶことが多いが、「ホームレス」であるという状態はどういうことなのか。

「居住のグラデーション」 路上で暮らすということと、住む家があるという事の間には様々な居住形態がある。制度として、生活保護、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法、ホームレス自立支援事業などがあるが、これらがどのような状況にあるか。

また、「貧困」が見えづらくなっている理由として、政府・マスコミ・市民・本人の「四重の否認」があるということをお話いただきました。最近の動向として、テレビで取り上げられるようになってきていること。格差から貧困(貧困を含む格差)へ実感を伴っての関心へと変化している。

そして、人はどうやって〈貧困〉まで追い込まれるのか。さらには、〈貧困〉とはどのような状態なのか。そして、自分たちには何ができるのか。順を追って丁寧にお話いただきました。

最後に、湯浅さんがこのような活動に関わる様になったきっかけなど、ご自身の体験についても語っていただきました。

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【受講生の感想】
・自己責任論が生まれるのは相手のバックグラウンドを見ていないからだと思った。そのためには自分で行って、見て、しゃべるのが大事やってことをあらためて感じた。

・貧困って、遠い国でのことと思ってた。日本は貧困を隠そうとしているって言葉に納得。

・貧乏と貧困の違いを教わったけど、まだよくわからない。みなさん、最低生活費を下まわったら生活保護をうけますか?

【運営委員より】
この講義の前の週に、北九州で生活保護打ち切りによる餓死者がでた。今まで、見ようともしなかった身近な問題が、徐々に深刻な状況へ進んでいる事をしった。知らなかったというよりも、知ろうとしなかった/知らされてこなかった問題について考える機会になった。

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現代社会をどう捉えるか‐過去との対話を通して‐

【概要】
日時:2007年6月30日(土)
場所:東京YWCA
講師:野上元氏【筑波大学准教授】

【コンセプト】
現代の諸問題はみな何かしらの過去を持っています。「歴史」はどのようにつくられ、どのように私たちの社会や日頃の振る舞いの中に溶け込んでいるのでしょうか。「国家」「メディア」をキーワードに、「歴史」との付き合い方を考えます。

【講義内容】
<「家族」を媒介に、少し「歴史」を広げてみる>
「自分のできごと」「家族・親のできごと」「世相・若者文化・日本社会」「世界」の4つに分けられて記述された年表。これらをはさみで切り離して、スライドさせてみましょう。自分は今、25歳。ではお父さんが25歳のとき、日本では、世界ではどんな出来事があったのでしょうか?お母さんはどんな社会の中であなたを産んだのでしょうか?このワークは、知識としてしか知らなかった「歴史」に温かみを感じることが目的です。

<講義前半 ~「歴史」とは何か?~>
我々はなぜ歴史を学ぶのか?そんな問いかけから、講義はスタート。野上さんはこれに対する1つの回答として、「過去との<つながり>を意識すること」こそが歴史を学ぶ1つの意義だと強調されました。たかだか70~80年の人の一生よりも長いスパンの時間の流れを想像する手がかりとして、「家族」そして「国家」があるということです。少し難しい話でしたが、ビデオを使うなどして楽しく講義は進みました。

<Break ~研究のきっかけ~>
今の研究を始めたきっかけは、「戦争体験記」を書いた方々への聞き取り調査だそうです。調査をしていて、体験記に「書き残されたもの」と「書き残されなかったもの」があることに気付く。その関係はどうなっているのか?というのが野上さんの問題意識の原点だそうです。

<講義後半 ~「歴史」化される記憶~>
前半で取り上げた「国家」(日本)の代表的記憶として「戦争」や「昭和」を考えてみました。しばしば「風化していく」と言われる兵士たちの戦争体験が、体験記や写真、マンガなどを通してどのように私たちの社会に残っていくのでしょうか。また、「ALWAYS」など近年映画などで盛んに取り上げられる「昭和」は、どのように人々の間に記憶として残されていくのでしょうか。様々な媒体の事例を取り上げながら解説していただきました。予想以上に色々な形で記憶(歴史)は保持されるようです。「なぜ昭和は夕焼けで表されることが多いのか」という問いには受講生も興味深げで、どんどん面白い仮説が生まれました。

<「90年代後半」「2000年代」の「歴史」を書いてみる>
講義を踏まえて、今自分たちが生きている時代を記述するというワークを行いました。主観的な実感や経験を「歴史」にしてみるという試みです。出てきた案では「賃金格差が拡大し~」など、社会的なものが多い様子。一方、やはり世間的に「重要」とされていることを書いてしまう傾向も強いようです。<つながり>を意識した未来へのメッセージって意外と難しいかもしれませんね。

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【受講生の感想】
・歴史って暗記教科ではなくて”つながり”を考えるものと捉えたら、とても身近なものに感じました。このことを歴史の勉強する中学生とかに知ってほしいなと思いました。当時の自分が知っていれば歴史に対する捉え方も変わっていたのになと思いました。

・100年後のこととか、100年後に生きる人たちから見た今の時代って、あまり考えたことなかった。たまには色々考えてみようと思った。

・歴史を事実だけではなく考える練習をしないといけないな~。頭がとてもかたくなってね…。

【運営委員より】
前回までの2回の講義では世界規模の(=ヨコの)<つながり>について考えてきました。今回はそれに加え、時間軸を越えた未来や過去との(=タテの)<つながり>の話と位置づけられるでしょう。野上さんの講義からは「社会問題を考えるときでも、現在のことだけを考えない」というメッセージが常に受講生に対して発せられていたように感じました。それにしても、意外な媒体から「歴史」を考察できるということに、受講生も運営委員もまず驚きでした。

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