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国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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秋合宿

講師:石川一喜氏【拓殖大学講師】

多様な価値観・スタイルをもつ私たち。そんな私たちがグループで活動を行うことの意味は何でしょうか?この合宿では、後期へのステップとしてグループワークについて考え、共働学習のグループ作りを行います。

【プログラムの様子】

(1日目)
<前期の振り返り>

担当運営委員が簡単に各講座の内容を振り返った後、3人一グループになって各自自分が感じたことや考えたことをシェアしました。

アジア学院でのオリエンテーション合宿に始まり、田中先生による開発教育のワークショップ。ペマ先生は真の国際化とは何かを問いかけます。郵便から世界を切り取る内藤先生の手法は多くの者にとって新鮮でした。遠い存在のように思いがちな貧困問題を西澤先生は近づけてくれます。吉岡先生によって起業に関心を持った者も多く、佐野先生と理想の街づくりを考えました。

講座の前後に関連地域のフィールドワークやお店訪問に出かけた人も多く、アカデミアンらしい積極性が感じられました。

時間の後半は年代別にグループを変えて半年間で印象深かったことやその理由をグループの2人に伝えました。聞き手の話の引き出し方も問われます。

<テーマ発表・意見交換>
秋合宿までに、各自が考えてくることになっていた共働学習のテーマ。1日目夕食前のテーマ発表は、輪になって座り、中央には大きな模造紙を1枚置いた状態で始まりました。

まず自分のテーマに関連するキーワードを2つ、ポストイットに書きました。その後、順番に自分のテーマとなぜそれを取り上げたかの理由を皆の前で発表し、模造紙にテーマを並べていきます。この時は、自分のテーマと近いテーマが出ていたらその近くに並べました。まだはっきりまとまらない、という人も何人かいましたが、それぞれ面白いテーマが挙がっていきました。

順番にテーマが貼られていくにつれて、何となく関連しそうなテーマが島になってきます。皆が発表し終えた後は、模造紙の周りに近寄って、貼られたテーマの様子を見たり近いテーマの人と話したりする時間をとりました。

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<石川さんワーク・他者(異文化)理解>

自分の問題意識を人に伝えることによって考え直すワーク(ダイアド)から引き続き、他者を理解する=他者を積極的に自分の中に入れていくとはどういうことなのか、他者を理解するために必要な要素について、ワークを通して考えました。

・モノの見方
二つの見方のできる絵・図柄を使い、同じものを見ていても、背景が違うと違って見えることを確認した後、明らかにウソの事実を本当らしく伝えているビデオを見て、どうして、本当にあったことのように見えるのかグループでディスカッションを通して考えました。

その後で、一部を切り取られた写真を見て、その背景を想像するというワークを行いました。ワークを
通して、何か物事を見る際に、見えている一面以外の部分を、いかに想像していくのかということが、大切になってくることを確認し、それが、他者理解にも言えることを確認しました。

・傾聴
二人ペアになり、自分のことについて、人に話す&人の話を聴くというワークを行いました。二人とも前を向いて、相手の反応が見えない状態でひたすら話し続け、聴き続けた後、どう感じたのかを話し合い、どうしてもらうと話やすいのか、要求を出し合いました。そして、それを踏まえてもう一度相手の要求に沿う形で話し、聴くというワークを行い、最後にグループで、どういう聴き方をしてもらうと話しやすいのかということを共有し合いました。

「聴く」とは文字通り、十四の心を使って聞く(心で聞く)ということなのではないかということが出され、次のワークへとつなげられました。

・質の高いコミュニケーション
最後に、8人一組になり、A4の紙を八つに折ったシートを使って、一人一人のいいところを、直感で書いていくというワークを行いました。(いいとこさがし)

いいとこさがしを行った後、質の高いコミュニケーションとは何なのか、考えました。

質の高いコミュニケーションとは、すべてを開放すれば良いというものではなく、自分が開放できる最大のところまで開き、開放部分を広げていくことによって、未知の部分=可能性をも広げていくということであると確認しました。

全体的に和やかな雰囲気の中で行われ、ワークを行った直後から、一人ひとり他の人と接する姿勢や聴き方が変わっていたことが印象的でした。

(2日目)
<グループづくり>
1日目に発表してマッピングしたテーマをもとに、さらにグループの形をつくる作業をしました。まずA4サイズの紙の中央に自分のテーマを書きました。次に、その周りに関連するキーワードや一緒にグループを作れそうな他の人のテーマを書いていきます。そして、この紙をお互いに見せ合いながら、同じようなテーマや興味を持っている人を探して回ることをしました。

途中、何度か中断してどんなテーマの人がグループになっているのか状況を確認したり、また、仲間を見つけられず1人でいる人からこんなことをやりたいのだけど一緒にやりませんか?というアピールをする時間をとったりもしました。でも、似たような関心を持つ人を見つけて、しかも4人以上集めないといけないというのはなかなか難しく、結局今日の時点ではグループを確定させるには至りませんでした。

講義の中で講師から合意形成についての話を聞いたり、グループづくりについて「こだわりながらも、こだわらない」ことを心がけてみてほしいという話を聞いたりしていましたが、実際にやってみるとなかなか難しい、ということを実感したひと時。そんな中、諦めずに真剣に話し合っている受講生の姿が印象的でした。これからが楽しみです。

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自分の住む街

講師:佐野淳也氏【東京学芸大学環境学習研究員(環境共育・まちづくりファシリテーター)】

内外の問題に関心を持ち、活動をしている私たちは社会の中でどこにいるのでしょう?まちづくりの取り組みを通じて、自分と自分の住む街との関わりを考えます。

【講義内容】
今回の講義は、最初に「自分が住んでみたいところ」を話し合うことから始まりました。それぞれ、自分が住んでみたい街と、その理由を考えてお互いに発表し合いました。

講師の佐野先生は徳島県出身で、学生時代海外を訪問したり、ホームレス支援をしたりしており、阪神大震災の年にはNPOスタッフとして仮設住宅にあるケアセンターでの救援活動にも参加されたそうです。吉野川ダムのことを修士論文に取り上げた頃から「環境」や「持続可能な開発」といったテーマに興味を持つようになり、それから今の仕事に至っているということでした。

続けて、「持続可能な開発」ということについてたくさん資料を見ながら説明していただきました。主に、「エコロジカル・フットプリント(エコフット)」という人間の生活を支えるのにどれだけの生産可能な土地・地域が必要かを面積で表した指標、生活満足度・平均余命・エコフットの掛け算で算出される地球幸福指標(HPI:The Happy Planet Index)をご紹介いただきました。

また国内・海外で行われている「持続可能な開発」に向けた事例として、徳島県上勝町でのゼロウェイスト運動、岩手県葛巻町のがんばらない宣言やパーマカルチャー、オーストラリア・マレーニーのCOOPや地域通貨(LETS)などを写真を交えて紹介して下さいました。

最後にはワークショップを行いました。ワークの時に挙げた街ごとに郊外~都市で4つのグループに別れ、それぞれ2025年に住んでみたい街の具体的なイメージを絵に描きました。なかなか絵が描けないグループも、どんどんイメージがふくらんでにぎやかになっていくグループもありましたが、それぞれ個性的な街ができ上がっていました。

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【受講生の感想】
・皆で意見を出しながら町を創っていくこと、とても楽しい学びになりました。

・理想の街をつくるのは、住民の私達。街をつくるのは簡単じゃないけど少しでもいい街に近づけるように、私も少しずつ何かをしよう。

行動する市民‐起業を通じて社会をプラスに‐

講師:吉岡淳氏(カフェスロー代表)

私たちは1人の市民としてどう社会に関われるのでしょうか?いま注目されているものに”社会起業”があります。「スロー」で「環境に良い」起業を実践する講師の話から、それぞれが社会をよりよく変えていく方法を考えていきます。

【講義内容】
団塊世代の生まれという吉岡さん。学生時代の思い出、競争社会の中で韓国の若者と出会ったり、仕事で世界各地を飛び回ったりした中で感じたことをはじめに話して下さいました。

ユネスコで30年間働いた後、自分の住んでいる地域から離れている自分に気付き、市長選挙に立候補したのだそうです。そのような歩みを経て、ナマケモノ倶楽部の企画でエクアドルを訪ねたのをきっかけに、地球に負荷を与えない暮らしを具体的に実践し、経験できる場としてカフェスローを立ち上げたのだそうです。

割り箸、エビ、トイレットペーパー、塩、などを買って消費することによって、貴重な白樺の成木や、天然のマングローブ林や、ユーカリの原生林を破壊している現代の私たちの暮らし。そのような自然を破壊しながら成り立っている大量生産・大量消費至上主義のビジネスではなく、環境によいビジネス・仕事を創り出していくことが必要とのこと。

最後は、スロービジネスの強みは、払ったお金の対価に見合えば人は必ず納得してくれる、ということ。コンセプトがしっかりしていれば必ず成功する、過去の価値観にとらわれずに新しいことを運動ではなくビジネスとしてやっていってほしい、と力強く締めくくって下さいました。

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【受講生の感想】
・講義前半では、自分の"買う"という行為の裏にある様々な問題について考えさせられました。後半では、自分とは無縁だと思っていた"起業"、"ビジネス"というものを身近に感じることができました。

・ビジネスと環境・人権に配慮するということを結びつける方が、人々に影響を与え、変わっていく可能性がある、というのは確かにそうだと思いました。ものを買うとき、安い、便利といったことが優先されがちだけど、生産者、消費者、地球の3つに負荷をかけない生活を考え、継続できればいい。

【運営委員より】
地域に密着して、カフェスローという場で様々な実践をされている吉岡さんのお話を受講生と共有したい、という思いで講義を企画しました。吉岡さんの歩みを語って下さった後にスロービジネスに対する強い思いを伺ったことで、現代の大量消費社会に代わるものとしてのカフェスローで実践されている仕事の意義がとても印象深く響いていたように思います。さりげなくMy箸を持ち歩いていらっしゃる姿も印象的でした。

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