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地球市民アカデミア > 過去の活動 > 13期(2006年度)

国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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メディア‐発信する側の論理‐

講師:内藤陽介氏【郵便学者/切手の博物館副館長】

切手には発行国の政策やイデオロギーが反映されています。普段目にする切手や郵便から、発信する側が何を訴えようとしているのかについて知ることで、情報の受け手としてのあり方を考えます。

【講義内容】
この日の講義は、内藤先生が収集した切手を机にぎっしりと並べた状態で始まりました。切手を読み解いていくと、その切手が使われている地域、国を誰が支配しているかが分かるということを、今回は第2次世界大戦中のアジア各国の切手を見ながらお話していただきました。

戦争に向けてのプロパガンダが書かれた切手、敵国宛の手紙が返信されたことを示すスタンプが押された切手、中立を主張するために平和を望んでいるというメッセージを載せた切手、などなど。発行する側の意図がいろんな形で織り込まれていることを説明していただき、切手が持つメディアとしての役割に気付かされました。

また、切手の品質から当時の国の経済状況も知ることができる、ということも教えていただきました。最後には受講生どうしでディスカッションを行い、メディアの役割や切手から読み解けるたくさんの情報などについて、議論を交わしました。

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【受講生の感想】
・すべてのモノ・コトがあらゆるものを発信していることに改めて気付かされた気がします。

・「ものを通して歴史を見る」という視点が面白かった。

・どんなものにも歴史・バックグラウンドがあって、「メディア」として私たちに情報を発信しているんだと、気付かせてもらうことができた。でも、(中略)受け取る側の自分に知識がなかったり、正しく判断できなければ意味がないので、受信者としての自分をもって考えていなかなければ、と思った。

【運営委員より】
実際に使われていた切手を見ながらお話を聞くことができたのですが、これだけ多くのことが1枚の切手から読み解けるということがとても新鮮でした。

今回はメディアの1つの身近な例として切手を取り上げたわけですが、発行する側の意図がどのように織り込まれているかを学ぶことを通じて、新聞やニュースなどのメディアが伝えるものにも発信する側の意図が織り込まれていることに気付き、自分でその内容を吟味する力を身に付けることの必要性を実感しました。

国際化時代における多文化コミュニケーション

講師:ペマギャルポ氏(桐蔭横浜大学・大学院 教授/チベット文化研究所 名誉所長)

国際化という言葉だけが先行している感のある日本は、外国からどのような国に映るのでしょうか。多文化コミュニケーションという視点から、国際化とは何かを考えます。

【講義内容】
2回目の講義は、多文化をテーマにペマ=ギャルポ先生にお迎えしました。ペマ先生はチベット出身で、子どもの頃にインドに亡命。難民キャンプで少年期を過ごした後に来日され、日本での生活は40年余りになります。難民として過ごされた経験、チベット人から見た日本・日本人についての貴重なお話、文化、国際化に関する先生の考えなどを、とても穏やかな、でも力のこもった語り口で話して下さいました。

<チベットクイズ>
最初は、運営委員によるチベットクイズでスタート。○×クイズで、上位3名にはペマ先生から素敵なプレゼントがありました。
1.チベットの面積は日本の面積よりも広い。
2.チベット自治区の平均標高は4000M以上である。
3.チベット人の主食は米である。
4.現在のダライラマは(アカデミアと同じ)13世である。
5.ダライラマは現在インドに住んでいる。
(※正解は↓にあります。)

<生い立ち・個人史>
前半は生い立ちから、日本に来られるまでの体験談を中心に講義を聴きました。チベットの豪族の家に生まれ、裁判ごっこなどしながら過ごしていたところに、中国が攻め込んできたこと。逃げていく途中で、子どもだった自分にとって一番悲しかったのは、飼っていた犬との別れと、別れた馬が涙を流していたことだったという話。難民としてインドで過ごしたときのこと、など。大変な中を生きてこられた経験を、リアリティをもって、でもとても穏やかに語られていた姿が印象的でした。

<多文化共生・国際化について>
後半は、文化について話をして下さいました。文化は、歴史、自然、民族特有の経験、気候などから成り立っているものであり、どこに持っていってもよいというものではないこと。そこに生きた人たちの工夫の結晶であって、文化には優れた、遅れたということはないし、上下もないということ。地球市民ということを言っているが、地球全部を同じ文化に統一しようとする必要はない。様々な文化をそれぞれ大事にして、共有することが大切ということ、などなど。ご自身の体験に裏付けられた言葉が、どっしりと重みをもって心に伝わってきました。

<クイズ正解>
1.チベットの面積は日本の面積よりも広い。⇒×(チベットが独立国家だった時代の面積は日本の5倍以上。日本は38万平方キロ。チベット自治区は120平方キロだがチベット全体では230万平方キロ。)

2.チベット自治区の平均標高は4000M以上である。⇒○(旅行に行くときは高山病に気をつけましょう。)

3.チベット人の主食は米である。⇒×(ツァンパと呼ばれる小麦の粉をいためたものにバター茶を練りこんで団子状にしたもの。)

4.現在のダライラマは(アカデミアと同じ)13世である。⇒X (14世。輪廻転生が信じられていてダライラマ没後、湖で宣託を受けて探しにいくのは有名ですね。)

5.ダライラマは現在インドに住んでいる。⇒○(インドにお住まいです。)

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【受講生の感想】
・国際化が進む日本の現状についていけていない日本人。これからどうしていけばいいのか、ヒントをもらえました。「共有」「尊重」「共生」自分の意識をまず変えていきたいです。

・ご自身の半生を交えた体験から確信された共生の方法を聞く機会が持ててよかった。自分が知らなかったことがいつもながら多くてやれやれと思います。

【運営委員より】
説得力のある、味わい深い言葉やお話がたくさんあって、それぞれに心に残るお話をたくさんいただきました。日本の中にもたくさんの外国人が住むようになって、身近なところでも国際化が進んできているように思います。みんなを同じにしようとするのでなく、多様性を受け入れて、それぞれの文化を尊重することを通じて、本当の意味での国際化ができるようにならないと、と感じました。最後には、翌日に誕生日を迎えられるペマ先生に、12期生手作りの紅茶ケーキをプレゼント。忙しい中、ギリギリまで懇親会にも参加して下さり、素敵な時間となりました。

国際協力と開発教育‐地球市民は可能か‐

講師:田中治彦氏(立教大学文学部教授/開発教育協会(DEAR)代表理事)

地球上の諸問題に対し、市民が草の根レベルで出来ることはあるでしょうか?また、「国際協力」という言葉を口にするとき、「相手」のことを私たちはどのように考えているでしょうか?開発教育の視点でまず、考えてみます。

【講義内容】
アジア学院でのオリエンテーション合宿の後、最初の講義でした。西那須野駅で初めて出会ったメンバーと過ごした合宿を思い出し、また合宿には都合がつかなかったメンバーと合宿での体験を共有するために、最初にミニオリエン合宿を行いました。合宿のはじめにやった「肩たたき」でリラックスした後、写真や最後の振り返りで書いたウェビングの紙を見ながら、合宿で感じたこと、印象に残ったことを話し合いました。

合宿の雰囲気を思い出し、初参加のメンバーもちょっとリラックスしたところで田中治彦先生の講義に入りました。国際協力、援助の歴史の概略をお話いただいた後、「される側からみた援助」というワークショップに入りました。これは全部で9つのワークからなるものなのですが、時間の都合で今回は最初のワーク「バーン村にて」だけを行いました。

このワークは、タイ北部の山岳民族の村にトレッキングに出かけた旅行者になった気分で、訪ねた村やそこにある学校に対する援助について、いくつかの設問についてグループ討議を行うというものです。4つのグループに分かれて行いましたが、国際協力、援助、村の状況や村人の気持ち、などについて様々な意見が出されました。いくつか紹介します。

<お金を出すことに関連して>
・お金を出すことには反対。理由としては、量、質、プロセスすべてにおいて問題があると考えられるため。
量:額が大きすぎて依存を呼ぶのではないか?
質:使い道をすべてアイ子さんが決めている。サッカーボールなどを買うなら、今後のことも考えて、ボランティアで働いている教師の給与にすべきなのでは?
プロセス:村人との対話がない。
全体として:他の小学校や他の村に対する配慮もない。

・気持ちでは賛成したいが、方法論に問題あり。村人の状況が分からない。

・お金を出すことには反対。将来的なつながりが見えてこない。アイ子がお金を出せなくなったら結局その活動はできなくなってしまう。

・アイ子さんの志はよい。しかし、現金をあげてしまうのはどうなのか?“すぐに現金が手に入る”という印象を村人に与えかねない。こちらも苦労して貯めたお金、簡単に手に入ると思ってほしくない。村の人たちがどう思っているか分からない。

<援助をよりよくするために>
・村人との対話。思いやニーズを知ること。

・村人との腹を割った話し合い。飲み会。

・村人との話し合い。ただ現金を渡すのではなく、自分たちでお金を作れるようにサポートする。看板やビラのあり方を考え直す(説明文や連絡先など)

・村人との話し合い。アイ子さんに、批判的な意見も含めていろいろな意見を伝える。そのうえで、アイ子さんに、選択してがんばってほしい。

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【受講生の感想】
・開発教育…初めて接する言葉。一言で国際協力って言うのは簡単だけどムズカシイ。

・日本の中で参加型というのはまだ少ないという事を実感しました。知らないうちに基準が自分達の思うようになっている。それをもう一度見直し、見つめたいと思いました。

【運営委員より】
ワークショップの後、開発に関してお話を聴きました。開発には「慈善型開発」「プロジェクト型開発」「参加型開発」という大きく分けて3つの型があり、それぞれに長所、短所があるというお話を伺いました。また、開発を「参加型」にするためのツールとして、マップ作りや季節カレンダー、課題さがしなどを教えていただきました。どれが優れているということではなく、援助される側の状況やケースによって、どの形がいいかを考えて最適な方法を取ることが大切、というお話でした。

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