講師:田中治彦氏(立教大学文学部教授/開発教育協会(DEAR)代表理事)
地球上の諸問題に対し、市民が草の根レベルで出来ることはあるでしょうか?また、「国際協力」という言葉を口にするとき、「相手」のことを私たちはどのように考えているでしょうか?開発教育の視点でまず、考えてみます。
【講義内容】
アジア学院でのオリエンテーション合宿の後、最初の講義でした。西那須野駅で初めて出会ったメンバーと過ごした合宿を思い出し、また合宿には都合がつかなかったメンバーと合宿での体験を共有するために、最初にミニオリエン合宿を行いました。合宿のはじめにやった「肩たたき」でリラックスした後、写真や最後の振り返りで書いたウェビングの紙を見ながら、合宿で感じたこと、印象に残ったことを話し合いました。
合宿の雰囲気を思い出し、初参加のメンバーもちょっとリラックスしたところで田中治彦先生の講義に入りました。国際協力、援助の歴史の概略をお話いただいた後、「される側からみた援助」というワークショップに入りました。これは全部で9つのワークからなるものなのですが、時間の都合で今回は最初のワーク「バーン村にて」だけを行いました。
このワークは、タイ北部の山岳民族の村にトレッキングに出かけた旅行者になった気分で、訪ねた村やそこにある学校に対する援助について、いくつかの設問についてグループ討議を行うというものです。4つのグループに分かれて行いましたが、国際協力、援助、村の状況や村人の気持ち、などについて様々な意見が出されました。いくつか紹介します。
<お金を出すことに関連して>
・お金を出すことには反対。理由としては、量、質、プロセスすべてにおいて問題があると考えられるため。
量:額が大きすぎて依存を呼ぶのではないか?
質:使い道をすべてアイ子さんが決めている。サッカーボールなどを買うなら、今後のことも考えて、ボランティアで働いている教師の給与にすべきなのでは?
プロセス:村人との対話がない。
全体として:他の小学校や他の村に対する配慮もない。
・気持ちでは賛成したいが、方法論に問題あり。村人の状況が分からない。
・お金を出すことには反対。将来的なつながりが見えてこない。アイ子がお金を出せなくなったら結局その活動はできなくなってしまう。
・アイ子さんの志はよい。しかし、現金をあげてしまうのはどうなのか?“すぐに現金が手に入る”という印象を村人に与えかねない。こちらも苦労して貯めたお金、簡単に手に入ると思ってほしくない。村の人たちがどう思っているか分からない。
<援助をよりよくするために>
・村人との対話。思いやニーズを知ること。
・村人との腹を割った話し合い。飲み会。
・村人との話し合い。ただ現金を渡すのではなく、自分たちでお金を作れるようにサポートする。看板やビラのあり方を考え直す(説明文や連絡先など)
・村人との話し合い。アイ子さんに、批判的な意見も含めていろいろな意見を伝える。そのうえで、アイ子さんに、選択してがんばってほしい。
【受講生の感想】
・開発教育…初めて接する言葉。一言で国際協力って言うのは簡単だけどムズカシイ。
・日本の中で参加型というのはまだ少ないという事を実感しました。知らないうちに基準が自分達の思うようになっている。それをもう一度見直し、見つめたいと思いました。
【運営委員より】
ワークショップの後、開発に関してお話を聴きました。開発には「慈善型開発」「プロジェクト型開発」「参加型開発」という大きく分けて3つの型があり、それぞれに長所、短所があるというお話を伺いました。また、開発を「参加型」にするためのツールとして、マップ作りや季節カレンダー、課題さがしなどを教えていただきました。どれが優れているということではなく、援助される側の状況やケースによって、どの形がいいかを考えて最適な方法を取ることが大切、というお話でした。