講師:内藤陽介氏【郵便学者/切手の博物館副館長】
切手には発行国の政策やイデオロギーが反映されています。普段目にする切手や郵便から、発信する側が何を訴えようとしているのかについて知ることで、情報の受け手としてのあり方を考えます。
【講義内容】
この日の講義は、内藤先生が収集した切手を机にぎっしりと並べた状態で始まりました。切手を読み解いていくと、その切手が使われている地域、国を誰が支配しているかが分かるということを、今回は第2次世界大戦中のアジア各国の切手を見ながらお話していただきました。
戦争に向けてのプロパガンダが書かれた切手、敵国宛の手紙が返信されたことを示すスタンプが押された切手、中立を主張するために平和を望んでいるというメッセージを載せた切手、などなど。発行する側の意図がいろんな形で織り込まれていることを説明していただき、切手が持つメディアとしての役割に気付かされました。
また、切手の品質から当時の国の経済状況も知ることができる、ということも教えていただきました。最後には受講生どうしでディスカッションを行い、メディアの役割や切手から読み解けるたくさんの情報などについて、議論を交わしました。
【受講生の感想】
・すべてのモノ・コトがあらゆるものを発信していることに改めて気付かされた気がします。
・「ものを通して歴史を見る」という視点が面白かった。
・どんなものにも歴史・バックグラウンドがあって、「メディア」として私たちに情報を発信しているんだと、気付かせてもらうことができた。でも、(中略)受け取る側の自分に知識がなかったり、正しく判断できなければ意味がないので、受信者としての自分をもって考えていなかなければ、と思った。
【運営委員より】
実際に使われていた切手を見ながらお話を聞くことができたのですが、これだけ多くのことが1枚の切手から読み解けるということがとても新鮮でした。
今回はメディアの1つの身近な例として切手を取り上げたわけですが、発行する側の意図がどのように織り込まれているかを学ぶことを通じて、新聞やニュースなどのメディアが伝えるものにも発信する側の意図が織り込まれていることに気付き、自分でその内容を吟味する力を身に付けることの必要性を実感しました。