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地球市民アカデミア > 2007年06月

国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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現代社会をどう捉えるか‐過去との対話を通して‐

【概要】
日時:2007年6月30日(土)
場所:東京YWCA
講師:野上元氏【筑波大学准教授】

【コンセプト】
現代の諸問題はみな何かしらの過去を持っています。「歴史」はどのようにつくられ、どのように私たちの社会や日頃の振る舞いの中に溶け込んでいるのでしょうか。「国家」「メディア」をキーワードに、「歴史」との付き合い方を考えます。

【講義内容】
<「家族」を媒介に、少し「歴史」を広げてみる>
「自分のできごと」「家族・親のできごと」「世相・若者文化・日本社会」「世界」の4つに分けられて記述された年表。これらをはさみで切り離して、スライドさせてみましょう。自分は今、25歳。ではお父さんが25歳のとき、日本では、世界ではどんな出来事があったのでしょうか?お母さんはどんな社会の中であなたを産んだのでしょうか?このワークは、知識としてしか知らなかった「歴史」に温かみを感じることが目的です。

<講義前半 ~「歴史」とは何か?~>
我々はなぜ歴史を学ぶのか?そんな問いかけから、講義はスタート。野上さんはこれに対する1つの回答として、「過去との<つながり>を意識すること」こそが歴史を学ぶ1つの意義だと強調されました。たかだか70~80年の人の一生よりも長いスパンの時間の流れを想像する手がかりとして、「家族」そして「国家」があるということです。少し難しい話でしたが、ビデオを使うなどして楽しく講義は進みました。

<Break ~研究のきっかけ~>
今の研究を始めたきっかけは、「戦争体験記」を書いた方々への聞き取り調査だそうです。調査をしていて、体験記に「書き残されたもの」と「書き残されなかったもの」があることに気付く。その関係はどうなっているのか?というのが野上さんの問題意識の原点だそうです。

<講義後半 ~「歴史」化される記憶~>
前半で取り上げた「国家」(日本)の代表的記憶として「戦争」や「昭和」を考えてみました。しばしば「風化していく」と言われる兵士たちの戦争体験が、体験記や写真、マンガなどを通してどのように私たちの社会に残っていくのでしょうか。また、「ALWAYS」など近年映画などで盛んに取り上げられる「昭和」は、どのように人々の間に記憶として残されていくのでしょうか。様々な媒体の事例を取り上げながら解説していただきました。予想以上に色々な形で記憶(歴史)は保持されるようです。「なぜ昭和は夕焼けで表されることが多いのか」という問いには受講生も興味深げで、どんどん面白い仮説が生まれました。

<「90年代後半」「2000年代」の「歴史」を書いてみる>
講義を踏まえて、今自分たちが生きている時代を記述するというワークを行いました。主観的な実感や経験を「歴史」にしてみるという試みです。出てきた案では「賃金格差が拡大し~」など、社会的なものが多い様子。一方、やはり世間的に「重要」とされていることを書いてしまう傾向も強いようです。<つながり>を意識した未来へのメッセージって意外と難しいかもしれませんね。

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【受講生の感想】
・歴史って暗記教科ではなくて”つながり”を考えるものと捉えたら、とても身近なものに感じました。このことを歴史の勉強する中学生とかに知ってほしいなと思いました。当時の自分が知っていれば歴史に対する捉え方も変わっていたのになと思いました。

・100年後のこととか、100年後に生きる人たちから見た今の時代って、あまり考えたことなかった。たまには色々考えてみようと思った。

・歴史を事実だけではなく考える練習をしないといけないな~。頭がとてもかたくなってね…。

【運営委員より】
前回までの2回の講義では世界規模の(=ヨコの)<つながり>について考えてきました。今回はそれに加え、時間軸を越えた未来や過去との(=タテの)<つながり>の話と位置づけられるでしょう。野上さんの講義からは「社会問題を考えるときでも、現在のことだけを考えない」というメッセージが常に受講生に対して発せられていたように感じました。それにしても、意外な媒体から「歴史」を考察できるということに、受講生も運営委員もまず驚きでした。

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グローバル経済‐国境を越える問題とその構造‐

【概要】
日時:2007年6月16日(土)
場所:東京YWCA 217教室
講師:田中優氏【未来バンク事業組合理事長/ap bank監事/日本国際ボランティアセンター(JVC)理事】

【コンセプト】
グローバリゼーション/自由貿易という名の下に巨大化する多国籍企業。それに伴い、資産の偏りや環境破壊も世界的な問題となっています。具体的な事例を通じてグローバル経済の構造を知り、問題解決への道を探ります。

【講義内容】
<経済クイズ>
今回のテーマである「グローバル経済」について、クイズを行いました。「預貯金額の一番多い金融機関は?」「ODA(政府開発援助)の一番多い国は?」などの質問に、受講生の皆さんは挙手で答えました。

<講義>
当日配布用に準備していただいた資料のボリュームに、まずは圧倒されました。自分達にとっても身近な「ごみ」の内訳から始まり、「リサイクルを妨げる資源の価格破壊」、「その原因であるODAと途上国の債務」、そして「ピークオイル問題」、その結果としての「石油資源の奪い合いと戦争」、「その戦争を支える米国債」、そして「米国債の購入に使われる日本人の預貯金」へ。身近なところから始まった問題が、実は世界的につながっている現状を、とても分かりやすく話していただきました。

後半は、前半で知った世界の現状に対して、田中さんが行っている具体的な活動である、「市民ファンド」や「省エネ家電への買い替え促進活動」のお話や、そもそも田中さんが社会運動をする事になったきっかけのお話などをお聞きしました。

<質疑応答>
受講生の皆さんから集めた質問を分類し、時間の許す限り田中さんに答えていただきました。今までお金についてほとんど考えた事がなかった人も多かったようですが、預貯金も含めたお金の使い道や、情報収集の仕方などについて、多種多様な質問が出ました。

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【受講生の感想】
・普段何気なく使っているお金ですが、自分の知らない所でお金がどういう使われ方をしているのか知る事が出来た。仕事がお金を取り扱う事なのに、知らない事が多く、もっと情報を集めないといけないと思った。

・今日の授業は、泣きそうになったり、わくわくしたり、大忙しでした。ちゃんと考えなきゃです。難しかったけど、話が聞けてよかったです。

・自分の目に見えるところ(例えばお金を使うとき)には、きちんと考えて行動できることが、自分の目で見えてないこと(例えばお金を預けるとき)には、とたんに何も考えていなかったのが恥ずかしいです。ない頭で知恵をしぼっていきたい。

【運営委員より】
「口でいくら主張するより、実際に買い物や預貯金などの『お金』という意思表示の方が、はるかに力がある。」穏やかに語りかける田中さんの話す内容の重要さに、深くうなずく人、難しい顔でうなっている人など、聞く側の反応も様々でした。また一つ、新しい視点に気づける講義でした。

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国際協力と地球市民社会

【概要】
日時:2007年6月2日(土)
場所:東京YWCA
講師:山崎唯司氏 【(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)理事】

【コンセプト】
環境問題、民族対立、貧困といった国内外の開発課題に対し、日本の「市民」はどうしたらいいのか?そして市民は「社会」をどのように構築したらいいでしょうか。講師のNGOでの経験から、ともに考えます。

【講義内容】
<オリエンテーション合宿の振り返り>
アジア学院でのオリエンテーション合宿後、一週間ぶりに東京のYWCAで行われた最初の講義でした。初めにオリエンテーション合宿の振り返りを机ごとのグループに別れて行いました。合宿で体験・実感したこを話したり、合宿には参加できなかったメンバーへ体験や感想の共有したりする時間をとり、各グループで話した内容を全体に発表しました。

<講義前半 ~21世紀の地球社会 あなたはどういきますか~>
合宿の様子を思い出し、全体が和やかな雰囲気になったところで、山崎氏の講義に入りました。講義の前半は、山崎氏と受講生全員で「21世紀の地球社会 あなたはどういきますか。」という問いのシートを一緒に取組み、それぞれシートにあらわされた数字に対し、その数値が地球上の何を示しているのか考えました。

その後各自で、世界の課題と私のつながり、これからの社会をどうしていきたいかについて、人に伝えるためには、どのように伝えたら伝わりやすいのか、紙に言葉として書き出しつつ考えました。中学生にも伝わるわかりやすい言い方や、実感を込めて伝えるためにはどう表現したらよいのか真剣に考えていきました。

<後半~親の顔が見てみたい~>
休憩をはさみ後半は、前半に行った「問い」に対する山崎氏自身の考えを伝えてくださいました。『持続可能性』とよく言われるが、実際にはどのようなことなのか。参加者自身も話し合って考える時間をとり、どのような言葉や意味を持つのか考えました。

また、山崎氏の幼少期の体験を振り返り、昔よく言われた「親の顔がみてみたい」の言葉の裏側にある人と人との繋がりについてお話してくださいました。そして、一緒に生きている人をどれだけ見渡せるかという点は国際協力も同じであるとまとめてくださいました。

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【受講生の感想】
・自分自身も、凝り固まったフックの持ち主だということを痛感しました。普段の生活で、身近な人や物からもっと周りを見つめ直してみたいです。

・本当の国際協力とは何なのか、今回の講義を通して考えさせられた。持続可能な社会の必要性を強く感じた。ありがとうございました。

【運営委員より】
今回は、山崎さんの体験談など多く含まれており深みのある盛りだくさんの講義でした。人それぞれ別々の『心のフック』を持っているというお話を初めとして、『持続可能性』を考えるときに山崎さんが言われた「すべての人が平等で 人としての尊厳をたもち 健やかで 将来に希望をもって 生きながらえる社会」という言葉がとても印象的でした。

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