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地球市民アカデミア > 2006年07月

国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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貧困‐見えていない社会、見ていない社会‐

講師:西澤晃彦氏【東洋大学教授】

豊かな国と言われる「日本」、その豊かな日本の中に隠された貧困の実態。日本のホームレス問題を通じて、貧困がなぜ生まれるのか、その根源を問うとともに、貧困の構造をどうしたら変えられるのかについて考えます。

【講義内容】

もともとは海外のことにご関心があり、ジョクジャカルタのスラムの調査などもされていたという西澤先生。それから、ご自分の足元を調査するうちにこの領域に広がったそうです。

講義では、ひとくちに「ホームレス問題」と呼んでいる対象が、野宿者の方々に限らず、水商売の方々、今定職についてない方々など、実際は見えない領域が広いことに気づかせていただきました。また、社会から徹底的に締め出されてしまう野宿者の方々をとりまく社会環境、またその隔離の過程が、住居と家族・職業によって国民を把握する明治維新後の改革からの流れを汲んでいること、その流れから非家族・非定住・非組織層を排除する社会構造が連綿と受け継がれているということを話していただきました。

非家族・非定住・非組織という層が増加しつつある昨今、この社会の、それらの層に対する排除のあり方がいつまで通用するか。わたしたちはどう考えるか、国家は、排除していた「例外」に対する例外法的措置をどこまでとっていくのか、という鋭い投げかけをしていただきました。

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【受講生の声】
・排除された人間、人間の選別・線引きって、何だろうと考え始め、それが前提・当たり前だと思う人たちが押し付けている結果なんだなと思った。そういった排除されていかざるを得ない社会を創ってしまう、線を引く、心理的な貧困でいうと、この社会こそが最も貧しいのではないかと思いました。

・うわべを取り繕うため、日本の構造や制度によって生まれた、日本の見えてない部分。本当に今まで私は見えていなかった。日本の制度には疑問や矛盾を感じた。講義を受けるたびに、他の国のことだけでなく、逆に日本の問題について考えさせられる。もっと見えてない部分を見られる人になりたい。

【運営委員より】
このテーマは毎年のアカデミアで恒例のテーマとなっています。
「貧困」というとアジアやアフリカの国々に目がいきがちですが、経済的には豊かなはずの、身近なところの「貧困」は場合によっては目に見えない形をとってしかも根深く、根強く存在している。

その存在を認識し、そして我々はこの「貧困」に対してどう関わっていけばいいか、という命題が、各受講者の皆さんの胸にも響いたと思います。限られた時間で、とても中身の濃い講義をしていただきました。

メディア‐発信する側の論理‐

講師:内藤陽介氏【郵便学者/切手の博物館副館長】

切手には発行国の政策やイデオロギーが反映されています。普段目にする切手や郵便から、発信する側が何を訴えようとしているのかについて知ることで、情報の受け手としてのあり方を考えます。

【講義内容】
この日の講義は、内藤先生が収集した切手を机にぎっしりと並べた状態で始まりました。切手を読み解いていくと、その切手が使われている地域、国を誰が支配しているかが分かるということを、今回は第2次世界大戦中のアジア各国の切手を見ながらお話していただきました。

戦争に向けてのプロパガンダが書かれた切手、敵国宛の手紙が返信されたことを示すスタンプが押された切手、中立を主張するために平和を望んでいるというメッセージを載せた切手、などなど。発行する側の意図がいろんな形で織り込まれていることを説明していただき、切手が持つメディアとしての役割に気付かされました。

また、切手の品質から当時の国の経済状況も知ることができる、ということも教えていただきました。最後には受講生どうしでディスカッションを行い、メディアの役割や切手から読み解けるたくさんの情報などについて、議論を交わしました。

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【受講生の感想】
・すべてのモノ・コトがあらゆるものを発信していることに改めて気付かされた気がします。

・「ものを通して歴史を見る」という視点が面白かった。

・どんなものにも歴史・バックグラウンドがあって、「メディア」として私たちに情報を発信しているんだと、気付かせてもらうことができた。でも、(中略)受け取る側の自分に知識がなかったり、正しく判断できなければ意味がないので、受信者としての自分をもって考えていなかなければ、と思った。

【運営委員より】
実際に使われていた切手を見ながらお話を聞くことができたのですが、これだけ多くのことが1枚の切手から読み解けるということがとても新鮮でした。

今回はメディアの1つの身近な例として切手を取り上げたわけですが、発行する側の意図がどのように織り込まれているかを学ぶことを通じて、新聞やニュースなどのメディアが伝えるものにも発信する側の意図が織り込まれていることに気付き、自分でその内容を吟味する力を身に付けることの必要性を実感しました。

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