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地球市民アカデミア > 2004年06月

国際協力、開発教育、貧困、メディアリテラシー、社会的企業、地域活性化などを、講義・ワークショップで学ぶ通年の市民講座。講師,ファシリテーターによる教材,手法,研修,セミナーの紹介。

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紛争の現場から

講師:佐藤真紀氏((特活)日本国際ボランティアセンター)

紛争の現場では、何が起き、そこにいる人々はどのような痛みを負っているのでしょうか。NGOとしてパレスチナ・イスラエルなどで支援活動に携わってきた講師から現地の実状を聞き、知ることの意味を考えます。

【講義内容】
日本ボランティアセンターの佐藤さんより、パレスチナ・イラクなどでの支援活動、現地の状況についてお話を伺いました。佐藤さんは紛争に巻き込まれている子供たちの描いた素直な絵をグラフィックデザインの技術を使い、一般市民へ発信しています。子供たちに自画像を描いてもらうプログラムの紹介から、子供たちの立場、気持ち、紛争の悲惨さ、矛盾などを分かりやすく説明してくださいました。日本政府ができること、NGOができることを佐藤さんの経験から伺うことができました。

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【受講生の感想】
・聞けば聞くほど、知れば知るほど、世界平和って難しいなと思う。だけど、夢を持って生きている子どもたちがいるのだから、一歩ずつできることをしてきたい。

・戦火にいる子どもたちの絵、写真を見ながら微笑んでいる自分、泣きそうな自分がいました。子どもたちには「こうなりたい」という夢があって、死を直前にしてもその表情はとても明るい。心からの笑顔なのか、それとも笑顔でないとやっていられないのか・・・。私はこの両方を含んだ笑顔のような気がしました。

・佐藤さんは想像力が大切だと仰っていて、僕も大切なことだと思っています。しかし、想像できなくなっているのが今の僕です。イラクがとても身近な問題として捉えることができない。ほとんどの人がそうだと思います。感じることができない人がたくさんいます。とても悲しい現実です。感じることのできない自分が、僕の大きな問題です。

【今日の一言】
想像力がすごく大事。痛みにしても、音にしても、情報は文字だけでなく、生にふれること。

国際協力とは?

講師:大橋正明氏(恵泉女学園大学、(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会代表)

開発と国際協力の歴史、理論的潮流を概観します。バングラデシュ、コソボなど長年にわたりNGOの国際協力の第一線で活動してきた講師の体験から実状を学び、私たちに何ができるかを考えます。

【講義内容】
講義は大凡二つの内容に別けることができます。

[1]国際協力とはなにか?
国際協力の概念は広く、開発協力や経済協力、国際交流などをも内包する概念である。国際協力の現場は多くの矛盾を抱えている。例えば、戦争を仕掛けて都市を壊しておきながら「平和構築」と称する開発援助を施す現実。平和=暴力のない状態と唱えつつも現存する多くの構造的貧困、構造的暴力。国際協力とは多くの矛盾を抱えつつリフレクションを通して物事の真理に近づいていく試行錯誤の連続である。そのため、国際協力に携わるものは絶えず開発的な考え方を持ち、相対的な価値判断を下していく必要がある。富の分配・食料援助一つ取ってもその構造を理解しない限り対応はできない。愛情だけでは地球は救えないのである。

[2]NGOとはなにか?
欧米と日本での考え方の違いがある。日本ではNPOとNGOを別ける傾向になるが欧米ではNGOはNPOの一部である。近代的な国民国家を構築する上でNGOが果してきた役割は大きい、古くはYMCAや赤十字もNGOである。国際協力の現場では、NGO=都市の高学歴者の集まりであることがある。しかし、重要なことは”現地の誰と活動をしてきたのか“である。ヒト・モノ・カネが瞬時に世界を跨ぐ世において、競争に取り残された人々を救うのかを考えていく必要がある。国益と市民の目的は必ずしも同一ではない。人間の同義として助けが必要な人たちの目線に下りていく存在が必要である。

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【受講生の感想】
・「矛盾を抱えながら行動していく」という強い信念を聞いて、もっと自分なりにできることを考えていきたいと思いました。知っているようで知らないこと、いいと思ってやっていることが実は思い込みであったりと多くの気づきがあったので、自分の中で深めていきたいと思います。

・声なき人々の声をいかに伝えていくか、それがNGOの大きな役割だという話は印象的だった。周りを見ると国際協力に関心を持つ人と全く関心のない人の境界ははっきりとある。自分たちが経験から得たこと、学んだことをいかに広く伝えていけるか、行動につなげていけるか、その手段と戦略を探っていきたい。

【今日の一言】
「愛」では地球は救えない、しかし、好きな地域をもって開発や協力をみてほしい。

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