講師:大橋正明氏(恵泉女学園大学、(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会代表)
開発と国際協力の歴史、理論的潮流を概観します。バングラデシュ、コソボなど長年にわたりNGOの国際協力の第一線で活動してきた講師の体験から実状を学び、私たちに何ができるかを考えます。
【講義内容】
講義は大凡二つの内容に別けることができます。
[1]国際協力とはなにか?
国際協力の概念は広く、開発協力や経済協力、国際交流などをも内包する概念である。国際協力の現場は多くの矛盾を抱えている。例えば、戦争を仕掛けて都市を壊しておきながら「平和構築」と称する開発援助を施す現実。平和=暴力のない状態と唱えつつも現存する多くの構造的貧困、構造的暴力。国際協力とは多くの矛盾を抱えつつリフレクションを通して物事の真理に近づいていく試行錯誤の連続である。そのため、国際協力に携わるものは絶えず開発的な考え方を持ち、相対的な価値判断を下していく必要がある。富の分配・食料援助一つ取ってもその構造を理解しない限り対応はできない。愛情だけでは地球は救えないのである。
[2]NGOとはなにか?
欧米と日本での考え方の違いがある。日本ではNPOとNGOを別ける傾向になるが欧米ではNGOはNPOの一部である。近代的な国民国家を構築する上でNGOが果してきた役割は大きい、古くはYMCAや赤十字もNGOである。国際協力の現場では、NGO=都市の高学歴者の集まりであることがある。しかし、重要なことは”現地の誰と活動をしてきたのか“である。ヒト・モノ・カネが瞬時に世界を跨ぐ世において、競争に取り残された人々を救うのかを考えていく必要がある。国益と市民の目的は必ずしも同一ではない。人間の同義として助けが必要な人たちの目線に下りていく存在が必要である。
【受講生の感想】
・「矛盾を抱えながら行動していく」という強い信念を聞いて、もっと自分なりにできることを考えていきたいと思いました。知っているようで知らないこと、いいと思ってやっていることが実は思い込みであったりと多くの気づきがあったので、自分の中で深めていきたいと思います。
・声なき人々の声をいかに伝えていくか、それがNGOの大きな役割だという話は印象的だった。周りを見ると国際協力に関心を持つ人と全く関心のない人の境界ははっきりとある。自分たちが経験から得たこと、学んだことをいかに広く伝えていけるか、行動につなげていけるか、その手段と戦略を探っていきたい。
【今日の一言】
「愛」では地球は救えない、しかし、好きな地域をもって開発や協力をみてほしい。