講師:米沢泉美氏(IT技術者、トランスジェンダー)
「私」とは何によって規定されるのでしょうか。外見?染色体?社会の目?法律?・・・10人いれば10通りの「性」と「生」があるはず。「性」を考えることは「生」を考えること。戸籍や住基ネットなどの制度がつくり出す問題を通して、性別やアイデンティティ、生き方の多様性と共生について考えます。
【講義内容】
開発協力を語る時にもよく目にするようになった「ジェンダー」という言葉。殆どの人にとっては深く考える必要のない自分の「性別」。自分にとっては当たり前に思っている事でも、そうでない人もいるのに、日本では戸籍や住基ネットなどの制度によっても自分の「性別」を強制されているらしい。
そもそも、「男」「女」という「性別」は、誰がどうやって決めているの?性は多様である。性は何によって決まるのか?性染色体や外見などではなく、自分の意思で決めるしかないはずなのだが…。
トランスジェンダーとはどういう存在なのか。トランスジェンダーが生きづらい社会は、自分の「性別」に疑問を感じない人にとっても生きづらい社会なのではないか。西洋的開発概念が入ってくるとともに、トランスジェンダーの人たちが生きづらくなるのは何故か。IT技術者で「トランス・ジェンダリズム宣言」の著者でもある米沢泉美さんから、自分の体験から出てくる話に、受講生はとまどいながらも引き込まれていました。
前半は「私」と性について考えるところから始まりました。「あなたは男性ですか?女性ですか?」「あなたの内面の女らしい部分は何ですか?」「人間の性別は誰が決めるべきだと思いますか?」などの質問の書かれたシートを配り、受講生に自分の「性」について考えてもらいました。男らしさと女らしさについて、それが何によって決められるのかなど。
後半は前半からの発問を元に、社会との関係の中での「性」について議論が深められました。性の多様性、多軸性について、ビデオ上映や米沢氏の体験を通して語られた。10人いれば10通りの性があるということ、ジェンダーを語る上で大切な概念(ジェンダーアイデンティティ、性指向、ジェンダーロール、制度的性別など)について整理し、さらには性別の自己決定権と、それを阻む戸籍や住基ネットなどの制度的性別、母体保護法28条をはじめとする医療の問題や社会との関係などへと展開されました。多様な性別のあり方と共生についてなどを語って戴きました。
【受講生の感想】
・男とか女とか、それ以外とか、性にもいろいろな形態があるらしいということがわかった。いずれにしろ、どのような性的アイデンティティーを持っていようと、それによって差別されず、本人が自己肯定感を持って生きられたら良いと思う。
・たくさん考えてわからなくなってきた。男だとか女などとか、そんなことはたいした問題じゃないと思ってみたり、でもそれってやっぱり重要なことじゃ・・・と考え直してみたり。
【今日の一言】
見た目やふるまい(ジェンダーロール)からは内面(ジェンダーアイデンティティー)は分からない。迷いに始まり、悩みを抱えている「その人」に対する自らの立ち位置を考えてほしい。トランスジェンダーは500人に一人の割合で存在するのだから。