講師:稲葉剛氏(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事)
貧困は遠い国だけの問題でしょうか? 豊かといわれる日本の中での貧困-ホームレス問題など-は、その人の責任によると思われがちです。今、目の前にある事柄を通じて、貧困を生み出す社会構造や、人が人らしく生きるとはどういうことかを考えます。
【講義内容】
日本の野宿者(ホームレス)の状況が生み出される要因は、 他国のように明確な労働問題としてではなく、個人の責任によると捉えられがちである。行政は、ホームレスの人々や外国人労働者を「排除」してきたが、最近はNGO団体との連携もとりつつ対策を講じ始め、行政の対応にもやや変化がみられる。近年、若者の不安定就労の傾向が強まり、新たな相談・支援形態の必要性も感じられる。
競争社会の中で、経済面のみならず、人間関係も失っているホームレスの人々の自立支援に医療保障・周囲の理解は欠かせない。他国のような宗教ベースも高福祉社会制度もない日本。だが、勝てずともせめて負けない社会は一人一人の手でつくっていけるのではないか。
【受講生の感想】
・「ホームレス」状態にある人々が一人でも減ること。"排除"ではなく"回復"できること。豊かさの影にある現状をまず知ることが必要だと思う。差別、偏見を失くすことがその第一歩となり得るのではないか。まずは直視したい。
・「貧困」は私にとって大きなテーマでもある。弱者の幸福追求のために本当に必要なこととは何なのだろう? そのために自分がやらなきゃいけないこととは何か? 「資本主義には勝てないが、資本主義に負けない空間はできる」の言葉にそうだなぁと思い、気持ちが少し楽になった。
【今日の一言】
「Kさんが路上で死ぬのは僕が嫌なんだ」という私の言葉に、医療を拒否していたKさんは考えを変えてくれ、病院へも行ってくれた。「お前は何者?」という自らへの問いにどう向き合い、人とどう関わるのか。“あたたかい言葉”はその姿勢から自ずと生まれるもの。